ボトックス Q &A セミナー後に医師から受けた質問
先日、講演を行ったアラガン社のセミナー(詳細コチラ)について、その後多くのドクターからご質問をいただきましたので、回答します。ボトックス注射を行っているドクターへの回答なので、一般の皆さんには少し難しい内容ですが、ボトックス治療に興味がある方には、ぜひご一読いただきたいです。
Q:『一回打ったら、一生打ち続けないといけませんか?』と患者さんから聞かれた時、どのように答えたらいいですか?
A:1回打って気に入ったら、また打つことをお勧めします。でも、一生打たないといけないということはありません。打ったことで、効果がある期間にシワが刻まれることを防ぐことができます。シワは、反復される表情の動きで次第に皮膚に刻まれるからです。打つのを辞めても、元の状態に戻るだけで、打ったことで劣化が早まると言うこはありません。
家でも車でもメンテナンスをすることで劣化が防げるように、シワもメンテナンスすれば進行は防げます。一回打ったら一生シワが出来なくなる魔法の注射はありません。
Q:「シワ、タルミの予防効果はありますか?根拠のある報告はありますか?」
A:反復動作によって次第に深くなるシワには、ボトックスで明らかなシワの予防効果があります。顔面痙攣(恒常的な筋収縮)がある患者において、痙攣側の方で明らかにシワが多いという宇津木先生の論文1)があります。「ボトックスを打った場合」と「打ってない場合」のハーフサイドテストなどの論文はないため、双子研究などの報告を探してみます。
1)宇津木龍一:口腔顎顔面の筋力トレーニングの是非 表情筋トレーニングはしわ,たるみを悪化させる,アンチ・エイジング医学,11(4)77-83,2015.
Q:「本当に抗体ができてしまった人への対応はどうされてますか?」
A:「本当に抗体が出来た=抗体産生を確認した」ことはありません。そもそも、現在、日本では抗体検査を実施することは現実的にかなり困難だからです。
確かに、ボトックスが他の人に比べて効きづらいな、と感じた方はいますが、ボトックスが全く効かない人は診たことがありません。美容領域の表情筋に使用する程度の量では、ボトックスの抗体産生率は低く2)3)、ボトックスが効かない人の半数以上は「適切な筋肉の選択ができてないこと、適切な注射手法でないこと、患者の期待値が上がったこと」が原因と言われています4)。さらに、「抗体形成」=「ボトックスが効かない」ではないと言われています。
ボトックスの効果が出づらい人に関しては、再注射を行っています。また、本当に効かない人がいたとしたら「期間をあけて再注射すること」と「ボツリヌストキシン注射の製剤種類を変える」ことをするつもりです。幸いにして、未だそこに至った人は一人もいません。
ボトックスが効かない、あるいは効きづらい、と感じた場合は、「ボトックスの抗体が出来た」と考える前に、筋肉の選択や打つ部位や量が適切であったか、まず自分の打ち方を振り返ることが重要です。
2)Sebastien Lacroix-Desmazes:Systematic analysis of BoNTA immunogenicity in clinical studies Basal Ganglia 9 12–17,2017
3) Markus Naumann: Meta-Analysis of Neutralizing Antibody Conversion with OnabotulinumtoxinA (BOTOX®️) Across Multiple Indications, Mov Disord 25(10):2211-8,2010;
3)要約:ボトックスビスタ(®︎)の中和抗体についてのメタアナリシス
対象:ベースライン抗体陰性であり、その後少なくとも1回以上抗体検査を行った3006例のうち、組み入れ基準を満たした2240例
方法:1999年〜2007年に行われたボトックスビスタ®︎に関する16の臨床試験についてメタ解析を行った。
注入後いずれかの時点で抗体陽性となった例
全適応症で0.49%(11/2240) 眉間で0.28%(2/718)
この眉間の0.28%(中和抗体陽性)も、最終的には0%(効果が発現している)。
また、9年以上美容でボトックスビスタを使用したもので、効果の減弱・投与量の増加・投与間隔の短縮化は見られていない。
4)Oliver Lange:Neutralizing Antibodies and Secondary Therapy Failure After Treatment With Botulinum Toxin Type A: Much Ado About Nothing?,Clin Neuropharm;32:213-218,2009
Q:「初歩的な質問なんですが、リタッチの時期、再診は先生はいつごろですか?」
A:ボトックス注射から2〜4週間後です。初回治療の場合は必ずご来院いただくようにお願いしています。8割以上の患者さんが指定した時期に来てくださいます。ご本人の好みや表情筋のクセ、ボトックスの及ぼす他の筋肉への影響を見極めるために、リタッチは重要です。リタッチは患者さんのためだけではなく、医師側がボトックスの手技を向上させるためにも、大変重要です。ボトックスは漫然と打っていても上手になりません。
当院では、注射の記録だけでなくリタッチについても、患者さんごとに細かく記録いています。また、必ず前後の写真も全顔で撮って記録を残しています。
当院は電子カルテですが、ボトックスだけは紙カルテで、患者さんごとの経過を記録しています。
Q:「鼻柱横のしわに対するアプローチはどのようにされていますか」
A:皺眉筋内側、鼻根筋にしっかり打っています。必要であれば鼻筋に打っています。また、たるみの強い方では、前頭筋の挙上力を利用するために、前頭筋正中には打たない(控えめにする)などの配慮をしています。
Q:「目尻の注射時に内出血を気にされるかたが多いですが明らかな血管を避ける以外に注意されておられることはございますでしょうか。」
A:細い針(34G)を使用し、針先が鈍れば交換し、冷やして血管を収縮させています。また、1箇所1箇所 丁寧に愛を込めて打っています。この「丁寧に」というのは結構重要なことです。
Q:目尻のボトックスは皮内注射でしょうか?
A:皮内注射です。
Q:「目尻のボトックスは全てボーラスですか?マイクロボトックスを併用することはありますか?」 「目尻の注入時に下半分にはあまり積極的に打たないようですが、患者さんの中には思いっきり頬を上げた時の目尻のシワを取りたいと訴える患者さんがいます。先生はどのように治療しますか?」
A:目尻のボトックスは、ボーラスだけでなく、広範囲、浅め、20箇所くらいにマイクロボトックス注射の手法で注射することもあります。ただ、思いっきり頰をあげた時にできる目尻のシワのうち、眼輪筋の収縮からなる目尻外側の斜めシワはこの手法でとれますが、下眼瞼に平行に出来る横シワはボトックスだけでは改善できません。
Q:「下眼瞼には何単位打っていますか」
A:症例や患者さんの希望によって全く違います。筋肉をアセスメントし、患者の希望を聞き、(涙袋の膨らみが患者にとって大切かどうか、たるみの有無も重要です)その症例ごとに必要な単位を打っています。
ボトックスについて、「どこには何単位打っていますか?」という質問全般、同じ回答です。
眉間といえばどこに何単位と決めているクリニックが多いようですが、全く意味がわかりません。どの部位にせよ、漫然と定型的にボトックスを打ったことは今まで一度もありません。
Q:「額や眉間のみ希望している方に対し、積極的に目尻ボトックスもお薦めしていますか?」
A:していません。目尻のシワは個人的に好きだからです。他の部位についてはどんどん積極的に指摘しますが、目尻のボトックスだけは、患者さんが自ら仰らない限り、私から指摘したことはありません。とは言え、額や眉間のボトックス治療が成功した後、患者さん自ら希望されることは多いです。
もちろん、患者さんに希望されたら打ちます。
Q:「0.05ccのボーラスまでしかしないというのは、2単位上打たないという事でしょうか。」
A:瞳孔中心線上では、眼瞼挙筋への予定外拡散を避けるため0.05cc以上(2単位)の注射をしていません。それ以上の量(単位)が必要な場合は、注射箇所を複数にすることがあります。また、ごく稀に希釈濃度を(濃く)変えることはあります。
その他、目尻のシワで0.05cc以上のボーラスをする場合はありますが、必ず眼窩をブロックすると共に針先が眼窩の外へ向くように注射しています。ボトックス注射では「予定外拡散」を起こさないことが最も重要です。また、基本の安全対策を一つ一つ守ることで、治療を成功に繋げることができます。眼窩周囲では「眼窩を手でブロック」「針先の向きは眼窩を避ける」ことに特に気をつけてください。
Q:「肌の毛穴やニキビにもボトックスは効果があると言われていますが、先生は毛穴やニキビに対してはボトックスをどのように使用していますか?」
A:過剰な皮脂のコントロールにはボトックスが有効と考えています。また、過剰な皮脂が原因の毛穴とニキビにはボトックスの効果があると考えています。皮脂過剰な部位の皮内にメソボトックスの手法でバスバス手打ちしています。とは言え、ニキビの治療を目的としてボトックスを打つことはありません。ニキビにはニキビの治療薬を使います。
Q:「眉間の鼻根筋への注射で、オメガ型に上方へ注射するのは前頭筋へ効いてスポックブロウになるリスクは考えませんか?もしリスクあればそれを避ける方法はありますか?」
A:鼻根筋が強いのはホリゾンタルタイプでオメガ型ではありません。オメガ型は鼻根筋が強いのではなく、前頭筋が強いタイプです。オメガ型のタイプでも皺眉筋内側をしっかり止めれば眉間のシワは改善されます。オメガ型の方のオメガ上方に少量打つ場合はありますが、その量でスポックブロウになることはありません。
スポックブロウ(眉の外側が不自然に上がる)は、正中の前頭筋線維が収縮しないで外側の前頭筋線維が収縮するときに生じます。昔の教科書では前頭筋に対して「V字」に打つ打ち方を推奨しているものがあり、そうした前頭筋の打ち方ではスポックブロウが生じやすくなります。
Q:「スポックブロウになりそうなときは同時に額にも少し打つようにしていますが、先生はそうはしないで眉だけ打つことでスポックブロウにならないようにできているのでしょうか」
A:前頭筋の動きが過剰な患者さんでは、皺眉筋の内側を緩めることで、相対的に前頭筋外側の動きによる眉毛外側の上がりが目立つことがあるため、その場合は、前頭筋にも少量追加することがあります。
Q:「皺眉筋の斜腹内側はかなり深層ですが、そこまで狙って注入しますか?」
A:眉毛内側では、症例により顔面骨に対して針先を垂直に向け、深層狙って打つこともあります。眼窩内への予定外拡散を避けるため、解剖をよくご存知の先生しかなさらない方がいいと思います。初心者には全くオススメしません。安全のためには、アラガンの推奨する打ち方(AMIアカデミーコチラご参照ください)が良いと思います。
以上、前回のセミナーに寄せられた質問への回答です。
参考になれば幸いです。
西田美穂
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