【検証】小顔(エラ・咬筋)ボトックスで変な膨らみ!?パラドキシカルバルジングについて
先日ネットニュースで、小顔(エラ・咬筋)ボトックス後のトラブルについての記事を目にしました。
「ほほからアゴにかけてボトックス注射を打ったという女性、タミカ・ローソンさんの投稿が大バズりしたそうです。
これは、おそらく日本では小顔ボトックスとかエラボトックスと言われる、ボトックスを咬筋に打った後のトラブルと考えられます。
写真)https://www.tvgroove.com/?p=89121より転載
ボトックスは、筋肉を緩める作用のある薬で、その効果を利用して眉間や目尻の表情ジワを改善する効果がありますが、
それだけでなく、筋肉を動かないようにして、使われなくなった筋肉の大きさを小さくすることも可能です。
俗に言われる「小顔ボトックス」とは噛む筋肉である咬筋にボトックスを打つことで、咬筋のボリュームが減り、その結果として小顔効果や食いしばりの改善効果などが得られます。
この効果は劇的で、私も半年に1回程度、定期的に打っています。
エラボトックスの小顔効果について詳細はコチラ
さて、筋肉を緩めるはずのボトックスが、冒頭の女性をどうしてこんな姿にしてしまったのでしょうか?
それは、咬筋の構造に原因があります。
咬筋は浅層、中間層、深層の三層が重なり合っており、さらに、固いスジで複雑に仕切られています。(参考文献1)この構造のため、ボトックスの注射液が広がらず、咬筋に部分的に作用しボトックスの効き具合に「ムラ」ができることがあります。
(参考文献1:Hyung-Jin Lee:The Anatomical Basis of Paradoxical Masseteric Bulging after Botulinum Neurotoxin Type A Injection ,Toxin 2017)
そのため筋肉の動きバランスが崩れて、ボトックスの効いていない筋肉が異常に動いてしまい、変な膨らみを作ってしまうのです。
この現象はパラドキシカルバルジング(逆説的な膨らみ: Paradoxical Bulging )と言われています。
この膨らみは、ボトックス注射を行ってから1週間程度で改善することもありますが、改善しない場合は、強く動く部分に打ち足すことで解消できます。
また、この現象は出やすい人とそうでもない人といます。
せっかくなので(←なにが?)
自分の咬筋で検証してみました。
わざとボトックスを一部の筋肉にだけ効くように打ってみると、
まんまと変な膨らみができました。ぜひ動画でご確認ください。変です。
動画上:パラドキシカルバルジングを作るために、10単位のボトックスを咬筋の深部だけに作用するように打った状態
※わざと起こした副作用です。通常の患者さんで起きることは極めて稀です。
動画下:さらに10単位のボトックスを追加して筋肉の動きを調整しました。
安心してください。ちゃんと治ります。
このようにボトックスでは思わぬトラブルが出ることもあります。
ボトックスは「シワを取る」注射でなく、「筋肉を緩める」作用のある薬で、しかも大変よく効くため、
筋肉の一部の動きを止めるとそれに伴い筋肉のバランスが崩れてしまうこともあります。
しかし、ボトックスの特性と解剖をきちんと理解していれば、このように調整することで改善できます。
冒頭の女性も、おそらく打ち足せば改善したと思います。
また彼女が言っているように、この作用が永遠に続くことはなく、たとえ調整しなかったとしても、
ボトックスは施術する量(力価)によりますが3〜6ヶ月で筋肉の動きやバランスが回復します。
ですので、安心してください!
ボトックスのトラブルはゼロではありませんが、ほとんどのトラブルは一過性で回復可能です。
ボトックス治療って本当に面白い!
自分の咬筋がまんまとぷくぷくした時には、嬉しくてみんなに「見て見てー」とぷくぷくして見せました。
ぜひ、これを読んでボトックスが打ちたくなった人は(おるんか?)当院にお越しくださいね。
私、失敗しないので・・・ってことは言えませんが、私、失敗を起こさないように日々修練し続けています。
同業の初学者の方は、文末に書いたおまけも読んでね❤️
西田美穂
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Beauty Tuning Clinic
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おまけ
◎ボトックス初学者の医師の方へ◎
この合併症を防ぐためには・・・
①ボトックスは咬筋の全層に効くように、針先で咬筋をとらえながら浅層から深層に行き渡るように注射する。
②注射ポイントや、液量、力価を極端に減らすと、一部の咬筋だけにボトックスが作用して効きムラが出やすくなるので、標準的な方法に忠実に行う。
もし、合併症が起きた時には・・・
①1〜2週間程度で改善してくることもあるので、待つ。ボトックスが作用し始める3〜7日目は特に部分的な膨らみを感じやすいが、その後落ち着くことが多い。
②待っても改善しない場合や早期改善を患者が望む場合は、膨らみの強い部分に5〜10単位程度、1〜2箇所に追加調整する。
③この現象が起きたことがある患者は咬筋の構造上、再度起きやすいので、次回施術時には施術ポイントや力価、液量を検討する。
④かといって、やたら複数箇所に打つことや満遍なく拡散させようとして液量を増やしすぎると、予定外に拡散(特に笑筋には注意)して別の合併症が起きるリスクもある。もともと筋肉の動きが強い人では出やすい。
SEFETY ZONEを守り、基本に忠実に、ちゃんとマーキングして、丁寧に注射を。
きちんとテキストや論文を読んでお勉強して施術しましょう。
そうすれば、きっとあなたもボトックスの面白さに目覚め、マニアとなることでしょう。
ぜひ、ボトックスの良さを共に広めていこうじゃありませんか!